拾い上げるとそれは写真だった。母と知らない男が写っている。
母は前を向いたまま左手をのばし、慎の手から写真を取り上げた。
そしてアクセルを深く踏み込んだ。
追い越し車線に移り前方の軽自動車を抜き去ると
「私、結婚するかもしれないから」といった。
驚いた慎はなぜか母の顔ではなく、背後の追い抜かれた車をみてしまった。
やや遅れて慎のした返事は「すごいね」だったが、いってみて変な感じがした。
第126回芥川賞受賞作品
題 名 | 猛スピードで母は |
著 者 | 長嶋 有 |
出版社 | 文芸春秋 |
点訳巻数 | 全2巻 |
点訳完成 | 2003年2月 |
納品先 | 障害者福祉センター図書室 筑波大学附属盲学校 |
点訳者コメント | <N.Y> 本を読むなど何年ぶりか?と言うくらい、なかった私ですが 次の点訳本がまちどおしい今日この頃です。 「猛スピードで母は」も、点訳をする前に夢中で読みふけってしまった一冊です。 また昔にもどって読書のたのしさを味わっています。 |
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